
不動産投資の「減価償却」とは?初心者にもわかる仕組みと物件選びのポイント
不動産投資について調べていると、「減価償却」という言葉を目にする機会が多いのではないでしょうか。
「減価償却できる物件を探しています」
「木造アパートは節税に向いていると聞きました」
「築古物件のほうが減価償却を多く取れるのでしょうか?」
実際、不動産投資では物件そのものの収益性だけでなく、減価償却を重視して物件を選ぶ投資家も少なくありません。
一方で、減価償却は「金額が大きければ大きいほど良い」「短期間で償却できる築古木造を買えば得」という単純なものではありません。
投資家の所得、物件の構造・築年数、土地と建物の価格割合、融資条件、保有期間、そして将来の売却まで含めて考える必要があります。
今回は、これから不動産投資を始める方にもわかりやすいように、「そもそも減価償却とは何か?」という基本から、物件選びの考え方まで解説します。
1.そもそも「減価償却」とは?
不動産を購入した場合、購入金額のすべてを購入した年の経費として計上できるわけではありません。
建物は長期間にわたって使用する資産であるため、税務上は建物の取得価額を一定の期間に分けて経費として計上していきます。
これが「減価償却」です。
例えば、建物部分が5,000万円の収益不動産を購入したとします。
この5,000万円を購入した年に一括して経費にするのではなく、その建物の構造や築年数などに応じた期間に分けて、毎年「減価償却費」として必要経費に計上します。
不動産所得は、基本的に
家賃収入などの収入 - 必要経費 = 不動産所得
という考え方で計算されます。
減価償却費は、この「必要経費」に含まれます。
ここで重要なのが、減価償却費は、その年に同額の現金を実際に支払う経費ではないという点です。
例えば家賃収入から管理費、修繕費、借入金利などを差し引き、実際のお金が手元に残っていたとしても、さらに減価償却費を経費として計上することで、税務上の所得を圧縮できる場合があります。
この「実際の現金支出を伴わない経費」という特徴が、不動産投資で減価償却が重視される大きな理由です。
2.土地は減価償却できない
初心者の方に特に覚えていただきたいのが、
土地は減価償却できず、建物は減価償却できる
という点です。
例えば1億円の一棟アパートを購入したとしても、1億円すべてを減価償却できるわけではありません。
仮に、
土地:6,000万円
建物:4,000万円
であれば、原則として減価償却の対象となるのは建物部分です。
そのため、同じ1億円の物件でも、
「土地価格の割合が大きい物件」と
「建物価格の割合が大きい物件」
では、減価償却の効果が大きく異なる可能性があります。
減価償却を重視して収益不動産を探す場合、販売価格や表面利回りだけを見るのではなく、土地・建物の価格割合を確認することも重要です。
なお、建物附属設備などは建物本体とは異なる耐用年数で償却する場合もあります。
3.建物の構造によって「法定耐用年数」が違う

不動産の減価償却を理解するうえで重要なのが「法定耐用年数」です。
住宅用建物の代表的な法定耐用年数としては、概ね次のような違いがあります。
木造:22年
鉄骨造:骨格材の厚さなどにより19年・27年・34年
鉄筋コンクリート造(RC造):47年
例えば、新築の木造アパートと新築RCマンションでは、同じ建物価格でも減価償却する期間が異なります。
一般的には、耐用年数が短ければ年間の減価償却費が大きくなりやすく、耐用年数が長ければ年間の減価償却費は小さくなる代わりに、長期間にわたって計上することになります。
これが、投資家の中で「木造は減価償却を取りやすい」と言われる理由の一つです。
4.中古物件では減価償却期間が短くなることがある
さらに重要なのが中古物件です。
中古建物は、新築と同じ法定耐用年数をそのまま使うとは限りません。
一定の場合には、経過年数を考慮した耐用年数を用いて減価償却を行います。
簡便法では、法定耐用年数をすでに超えている中古資産について、
法定耐用年数 × 20%
を耐用年数とする考え方があります。
例えば木造住宅の法定耐用年数は22年です。
22年を超えている木造建物の場合、
22年 × 20% = 4.4年
となり、端数処理によって4年となるケースがあります。
このため、築年数が経過した木造アパートなどでは、建物価格を比較的短期間で減価償却できるケースがあります。
ただし、「築22年以上の木造なら必ず4年で償却できる」と機械的に判断するのは危険です。
取得後に大規模な資本的支出を行った場合など、個別の条件によって取り扱いが異なることがありますので、実際の税務処理については税理士等への確認が必要です。
5.減価償却期間が短い物件のメリット

減価償却を目的とする投資家から注目されやすいのが、築年数の経過した木造アパートなどです。
最大の特徴は、条件によって比較的短期間に大きな減価償却費を計上できる可能性があることです。
例えば、給与所得や事業所得が高く、毎年の所得税負担が大きい方の場合、不動産所得で生じた損失を他の所得と損益通算できるケースがあります。
そのため、高所得の会社員、会社経営者、医師などが減価償却を意識して不動産投資を検討するケースがあります。
ただし、不動産所得の赤字であれば何でも給与所得などと自由に相殺できるわけではありません。
例えば、土地取得に対応する借入金利子については、不動産所得が赤字の場合の損益通算に一定の制限があります。
したがって、単純に「減価償却費が大きい=その金額すべてが節税になる」と考えないことが重要です。
6.減価償却期間が短い物件のデメリット
短期償却にはメリットがある一方、大きな注意点があります。
それが、
減価償却が早く終わる
ことです。
例えば数年間で大きな減価償却費を計上できたとしても、償却期間が終了すれば、その後は建物本体について同じような減価償却費を計上できなくなります。
家賃収入がそれほど変わらないにもかかわらず、税務上の経費だけが減少し、課税所得が増える可能性があります。
いわゆる「デッドクロス」についても注意が必要です。
借入金を返済していても、元金返済部分は必要経費にはなりません。
一方で減価償却費が減っていくと、
手元に残る現金は少ないのに、税務上は利益が出ている
という状態になることがあります。
そのため、築古木造物件を購入する場合には、「最初の数年間でどれだけ節税できるか」だけではなく、償却終了後のキャッシュフローまでシミュレーションすることが大切です。
7.築古木造には「修繕」と「融資」の問題もある
築古木造物件は、減価償却だけを見ると魅力的に見えることがあります。
しかし、不動産投資の本来の収益性まで考えると、別の問題があります。
築年数が経過していれば、外壁、屋根、防水、給排水設備、エアコン、給湯器などの修繕費が増える可能性があります。
短期間に大きな減価償却費を取れても、その間に多額の修繕費が発生すれば、実際のキャッシュフローは悪化します。
また、金融機関によっては築年数や法定耐用年数を融資期間の判断材料とします。
築古物件では、
・融資期間が短い
・自己資金を多く求められる
・金利条件が厳しくなる
・そもそも融資対象になりにくい
といった可能性もあります。
つまり、税務上魅力的な物件と、融資を受けやすい物件が必ずしも同じとは限りません。
8.では、RC造など減価償却期間が長い物件は不利なのか?
そうとは限りません。
RC造など耐用年数が長い建物の場合、短期間で大きな減価償却費を計上するという点では築古木造に劣るケースがあります。
一方、長期間にわたって安定的に減価償却費を計上できることはメリットでもあります。
また、比較的築浅のRC物件であれば、
・金融機関の評価を得やすい場合がある
・長期融資を組みやすい場合がある
・毎月の返済額を抑えやすい
・築古物件と比較して修繕リスクを抑えやすい
・将来の売却時に買主が融資を利用しやすい可能性がある
など、減価償却以外のメリットも期待できます。
短期的な節税だけではなく、10年、20年と長期保有しながら安定した家賃収入を得ることを重視する投資家にとっては、耐用年数の長い物件のほうが適している場合があります。
9.「短期償却」と「長期償却」はどちらがいい?
結論として、すべての投資家に共通する正解はありません。
例えば、現在の所得が高く、数年間の所得圧縮を重視している方であれば、短期間に減価償却費を計上しやすい中古木造物件が候補になることがあります。
一方、
「節税だけではなく長期的な資産形成をしたい」
「融資期間を長く取りたい」
「安定したキャッシュフローを重視したい」
「将来売却しやすい物件を持ちたい」
という方であれば、築浅RC物件や築浅アパートなどが適している場合もあります。
重要なのは、
「一番減価償却できる物件」を探すのではなく、「自分の所得・資産状況・投資目的に合った減価償却ができる物件」を探すことです。
10.減価償却目的で物件を探すなら「出口戦略」まで考える

減価償却を重視した不動産投資で、特に忘れてはいけないのが売却です。
減価償却をすると、その分だけ建物の帳簿価額は下がっていきます。
そのため、購入時から売却時までの税金を考えず、「保有中にいくら節税できたか」だけで投資効果を判断することはおすすめできません。
個人が不動産を売却する場合には、所有期間によって譲渡所得に対する税率も異なります。
また、法人で購入する場合には個人とは税務上の考え方が異なります。
そのため、
購入 → 保有 → 減価償却 → 売却
までを一つの投資として考える必要があります。
「5年間でいくら税負担を抑えられるか」だけではなく、
「5年後にいくらで売れる可能性があるか」
「その時点の残債はいくらか」
「帳簿価額はいくらになっているか」
「売却時にどの程度の税負担が生じる可能性があるか」
まで確認することが重要です。
11.初心者が減価償却物件を選ぶ際のチェックポイント
減価償却を重視して収益不動産を探す場合には、少なくとも次の項目を確認しましょう。
① 土地・建物の価格割合
減価償却の対象となる建物部分がどの程度あるかを確認します。
② 建物の構造
木造、鉄骨造、RC造などによって法定耐用年数が異なります。
③ 築年数
中古物件の場合、残存耐用年数の計算に大きく影響します。
④ 年間の減価償却費
「何年で償却するか」だけではなく、「年間いくら計上できるのか」を確認します。
⑤ 現在の所得と税率
同じ物件でも、投資家の所得状況によって減価償却の効果は異なります。
⑥ 融資条件
借入期間、金利、自己資金、年間返済額を確認します。
⑦ 修繕リスク
特に築古木造では、購入後の大規模修繕について確認が必要です。
⑧ 償却終了後のキャッシュフロー
減価償却費がなくなった後でも投資として成立するかを確認します。
⑨ 売却価格と出口戦略
「節税できるから買う」のではなく、「最終的に売却したときまで利益が残るか」を考えます。
12.「利回り」と「減価償却」は別々に考えない
収益不動産を探す際、どうしても「表面利回り○%」という数字に目が向きます。
しかし、
利回りが高い=手元にお金が残る
とは限りません。
同様に、
減価償却費が大きい=良い投資
とも限りません。
不動産投資では、
家賃収入、空室率、管理費、修繕費、固定資産税、借入金利、元金返済、減価償却費、所得税・住民税、そして将来の売却価格など、多くの要素が関係します。
そのため、本来は「表面利回り」と「節税額」を別々に見るのではなく、税引前・税引後のキャッシュフローを含めて総合的に判断することが重要です。
13.減価償却を目的に物件を買う前に知っておきたいこと
減価償却は、不動産投資の大きなメリットの一つです。
特に所得の高い方にとっては、物件選びを左右する重要な要素になることがあります。
しかし、減価償却はあくまで不動産投資を構成する一つの要素です。
「節税できるから築古木造を買う」
「RCは償却期間が長いから買わない」
といった判断だけで物件を選ぶことはおすすめできません。
築古木造には短期償却というメリットがある一方で、修繕・融資・売却というリスクがあります。
反対に築浅RCは年間の減価償却費が小さくなる場合がありますが、長期融資、安定運用、資産性などの面でメリットを持つことがあります。
大切なのは、
「節税額」ではなく「税引後に最終的にいくら資産が増えるのか」
という視点です。
14.仲和サービスでは「減価償却だけ」で物件を選びません

株式会社仲和サービスでは、収益不動産をご検討されているお客様の投資目的や資産状況を伺いながら、物件をご提案しています。
「減価償却を活用できる物件を探したい」
「高所得なので不動産投資による税務上の効果も考えたい」
「木造アパートとRC一棟マンションのどちらが自分に向いているかわからない」
「融資を利用しながら資産形成したい」
といったご相談も可能です。
減価償却を重視する場合でも、単純に築年数や構造だけで物件を選ぶのではなく、
収益性・減価償却・融資・修繕リスク・キャッシュフロー・出口戦略
を総合的に確認することが重要です。
特に不動産投資を初めて行う方は、「表面利回りが高い」「減価償却期間が短い」といった一つの数字だけで判断せず、ご自身の投資目的に合った物件を選びましょう。
仲和サービスでは、収益不動産の購入をご検討されているお客様のご希望条件を伺い、物件探しをサポートしております。
「減価償却を活用できる収益物件を探している」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
※税務上の注意事項
本記事は、不動産投資における減価償却の一般的な仕組みをわかりやすく説明することを目的としたものであり、個別の税務・節税効果を保証するものではありません。
減価償却方法、耐用年数、損益通算、取得価額の土地・建物への按分、譲渡時の課税関係等については、取得する物件や所有形態、個人・法人の別、所得状況等によって取り扱いが異なる場合があります。
実際の申告や具体的な税務判断については、税理士等の専門家へご確認ください。






